失われた小銭への怒り

たまたま小銭を大量に使ってしまって落ち込んだ時に、「失われた小銭への怒り」を見つけたので買ってしまった。これは、かのベートーヴェンが作曲した奇想曲風のロンドで、いらいらしてあまり発展性のない主題がちっぽけな怒りを表しているようで面白い。ちょっと展開したかと思うとしつこくしつこく帰ってくる。自動販売機の下に小銭を落としたベートーヴェンが地団駄を踏んでいるのが目に見えるようだ。もっとも、タイトルをつけたのはベートーヴェンではないらしい。作品番号が129なので最後のピアノソナタの後に作曲されたように思うのだけれど、若いころの作品だとの由。とは言え、最晩年にはディアベッリの何の変哲もない主題で長大な変奏曲を作ってしまったベートーヴェンのこと、この曲も彼なりの妙なユーモアが表れていると考えてもいいだろうと思う。

ケンプの演奏。POCG-90012。作品126のバガテルや、「エリーゼのために」、エコセーズWoO86など、アンコールピースばかりが収められたアルバム。

エリーゼのために/ベートーヴェ

エリーゼのために/ベートーヴェ